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2008年4月26日 (土)

漂流する「安保」3

 短命の石橋政権ですでに副総理・外相の地位を得ていた岸信介が、病気で総辞職した石橋のあとを受け、1957年2月に首相の地位についた。彼はかねての懸案である占領下の延長線上にある安保条約の不平等性を改善するため、それまでの政治折衝の経過にはずみをつける意図を持って渡米、同年6月19日に始まる日米首脳会談にのぞんだ。

 その第1回会談でアイゼンハワー大統領に対し、安保改訂問題を次のように切り出す。(原彬久『日米関係の構図』NHKブックス)

 当時在米日本大使館参事官として岸訪米準備に当たっていた安川壮によれば、岸はアイゼンハワー大統領に向かって、「安保条約はあくまで維持する」として、議論の前提を確認したあと、次のようにのべている。
 「しかし情勢は変化している。その変化とは、第一に日本の自衛隊が安保締結当時に比べてある程度の力をつけたこと、第二に日本が国連に加盟したことである。この情勢変化に鑑みて安保条約を再検討したい。在日米軍基地の使用についてアメリカは日本と事前協議をすること、および条約の無期限になんらかの期限をつけることを中心に条約の再検討をしたい」(安川インタビュー)。

 これに対するアイゼンハワーの応答はきわめて簡潔であった。彼は具体的なことには一切ふれず、ただ一言次のように答える。「安保条約を再検討することに異論はない」(同インタービュー)。岸の安保改訂提案は、ここにアメリカ側から原則的な同意を得ることになるのである。

 岸の提案にこれまで否定的な態度に終始してきたダレス国務長官の意向にもかかわらず、アメリカ側に改訂の機運が根ざしてきたのは、マッカーサー駐日大使(GHQ最高司令官マッカーサー元帥の甥)の、日本人の中立化指向(東西対立に対する)が強く、岸首相をその方向に追いやることのないよう配慮する必要がある、というレポートの存在がある。

 また、岸自身もそういったことを十分意識しながら、交渉力の裏付けとして利用したことは想像にかたくない。現在、情勢の変化は岸の頃とは比較にならないほど大きい。また世界は急速な変化を遂げようとしている。その中で「日本が対等の立場に立つ」という岸の理念は、今やむしろ後退しているといっても過言ではないだろう。

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