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2008年4月21日 (月)

漂流する「安保」2

 前回は、昭和26年9月、講和条約締結と同時に(旧)日米安保が締結されたことを述べた。その前文と第一条を掲載しておいたが、①武装解除をした日本には安全保障上の空白が生ずるため、米軍が占領軍に変わってその役割になう。②それは、米軍基地の存続とともに、日本側の希望によるものである。という前置きで始まる。

 その一方で、まだ日本が加盟していない国連憲章を引き合いにだして、個別自衛権と集団的自衛権の存在をうたいあげ、日本に「攻撃的な脅威」とならず、かつ「国際連合憲章の目的及び原則に従って平和と安全を増進する」ことに寄与可能な軍備を漸増させることを、「要望」という形でうたっている。

 そして第一条で米軍基地の設置を認めるのである。その最大の問題点は、米軍基地の使用目的が「極東の平和と安全」ということで、日本に直接関係のないことにも使えること、さらに「外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる」とあるように義務化されていないことである。

 また、内乱や騒じょうの鎮圧など内政への関与まで準備されていることは、ますます激化する冷戦の中で日本を含む極東アジアの赤化を防ぐということが日米安保の最大の眼目であったことを示す。そしてアメリカは条約締結後日本の軍備漸増を強圧的に迫り、昭和27年から29年にかけて警察予備隊→保安隊→自衛隊と肥大していく。

 自前の防衛力を高めたい、その一方でアメリカの軍事力依存を維持しておきたいと、いう日本の保守政治家の願望があったことは否めない。一方、それを巧みに利用しながら防衛予算増額への圧力を高め、折にふれ憲法や基地問題に対していらだちを見せるアメリカ――。それでいて、核武装やアメリカに匹敵するような他国攻撃能力を持つことには警戒心を持つ。

 この日米安保の構図、体質は60年(昭和35)に改訂された新安保を経て現在でも何ら変化していない。違う点はただひとつ、当時、吉田首相をはじめ岸首相に至るまで、この不平等な条件を改善し、国にとってより有利な結論を得るために外交上のつばぜり合いを繰り返していたということである。

 冷戦は終わった。共産主義の脅威はすでにない。革命の輸出もありえない。日本の経済力は世界第2位といわれるほどの域に達し、防衛費支出は世界で4~5位、突出したアメリカに次ぐ第2のグループに属し、第1級の防衛装備も保持するようになった。

 それなのにどうして旧安保の頃の政治家のように、アメリカと対等の立場に立とうとする意欲が見られないのだろうか。たしかに当時はアメリカが世界唯一の軍事大国ではなかった。日本も共産主義の脅威を逆手にとってものがいえた。 

ソ連崩壊を受けてアメリカは遂に世界を一極支配する軍事大国になった。国連すらも時により無視する行動をとった。日本は全面服従だけしか残された道がなかったのだろうか。アフガンやイラクの混乱の長期化、中東政策の手詰まりなどで、アメリカの単独行動主義は明らかに限界を見せ始めている。

 日本はアメリカとの同盟を解消する理由はないし、そのメリットもない。しかし現時点で、旧安保以来半世紀以上も続いている日米安保の構図と体質、いわゆる「安保体制」を見直し、新たに構築し直すことがあっていいのではないか。それは必ずしもアメリカが望まないことかどうか、友人としての日本のでかたひとつにかかっているはずだ。

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