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2008年3月27日 (木)

恒久法を持ち出す愚

 26日に報じられたところによると、福田首相は、自衛隊を海外派遣させる一般要件を定めておく「恒久法」を今国会で成立させるよう、山崎副総裁等に指示したという。なんで今頃、と思うのだが、ガソリン税や日銀総裁人事のことなどで、民主党と協議が断絶している中、話し合いの呼び水にする意味がある、という。

 福田首相については、冷静で洞察力があるかも知れないと、当初かすかな期待を抱いていたが、最近の言動から見るとすっかりなまってしまっているようだ。法案の性格上、どうしても憲法解釈や国連決議の評価、日米同盟との関連、集団的自衛権などが議論の対象になってくる。

 こんな国の将来を左右しかねないような重要法案を、「呼び水」扱いにするというのが第一わからない。しかも、民主党も小沢代表の何十年も前の古証文を焼き直して原則論を言ってみただけで、具体化について党内が一本化しているとは思えない。そうやすやすとは乗ってくるとは思えないのだが。

 今、イラクとアフガンが同じような状況に陥っている。すなわち、①イラクではアメリカ、アフガンではNATO軍が中心になって治安回復に当たっているが、効果が上がっているのは力が及ぶ地域・範囲に限られている。②現地政府に治安維持任務を移行しようと試みるが、管理能力のある旧政権のテクノクラートなどを追放してしまったため管理能力に乏しく、また募集で集まる要員の質が低く寝返りの心配もある。③駐留外国軍に対する住民の不信感は根強く、明らかに「いてほしくない」存在になっている。といったことだ。

 アメリカはイラクで手いっぱいのため、NATO諸国にアフガンへの増派を要請している。NATOはISAF(アイザフ=国際治安支援部隊)として派兵に協力しているが、タリバンの攻勢で危険が日々増大している。これに対してドイツは増派拒否の姿勢だ。

 「選民意識と和解」にも書いたが、ドイツのメルケル首相はイスラエルまでいって同国への連帯を誓いイランの脅威を強調するなど、ブッシュが取ってきた路線そのままにすり寄った発言をしている。また、フランスは1000人の増派を決定、ブッシュを喜ばせたが、わずか1000人では実効が疑わしいといわれている。

 このように、ブッシュの顔をたてることに一所懸命ながら、各国はアメリカの泥船にできるだけ乗らないよう、ギリギリのところで国益最優先で駆け引きをしているのだ。武力行使をともなわず、治安維持と復興支援なら自衛隊を派遣します、などという恒久法をこの時期に作ったら早速アメリカから言ってくるだろう。

 「心配してくれてありがとう。それではアフガンのテロとの戦い、さっそくよろしくお願いします」と。それを断れる政治が果たして日本にいるだろうか。恒久法の前提には、これまでないがしろにしてきた自衛隊と憲法解釈の厳正な再検討が必要であるということを、既エントリー「憲法改正と恒久法」でも主張した。小泉路線以後、各党から日本の進路を示す言葉が一向に聞こえてこない。

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