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2008年3月 6日 (木)

原理主義

 「入門編・戦争とは」と題し、「人間はなぜ戦争をするのでしょう」を6回にわけて書いてきた。構想を練った上でのことではなく、ブログを続けながら脳裏に浮かんだこと羅列してみただけである。そして、発想の助けとするため、戦争の原因を「差別」「経済」「拡張」「ナショナリズム」「宗教」に分けてみた。あたまの一字をとるとサ・ケ・カ・ナ・シである。

 言葉としてこなれていないし、学際的でもない。しかしまちがっているとも思えない。以上のうち一番自信がなかったのが、最後の「宗教」である。コメントをいただいた「逝きし世の面影」氏も同じ感想をもらしておられた。

 結論からいうと、現在多くの宗教による紛争があり、それが武力闘争の直接原因のように言われているが、実は違うのではないか、と思い始めたことである。もちろん、個々のケースによって異なり、一概に論じることはできないが、他のもろもろの原因を「宗教」で味付けし、戦意高揚に「宗教的情熱」を利用しているように見えてくるのだ。

 そこで、常套語化している「原理主義」について考えたい。大手マスコミなどで「犯行はイスラム原理主義組織によるものと見られる」などと表現していたがこれは誤用である。最近は「イスラム過激派」に変えているところもあるが、当然であろう。

 「原理主義(Fundamentalism)」とは、キリスト教で、聖書、福音書などの原典に書かれていることを厳格・忠実に信じ、守っていこうという考え方につけられた言葉である。したがってイスラム教にはあてはまらない。イスラム教徒にとって、アラビア語で書かれたコーランが日常を律する唯一の聖典である。

 イスラム圏で最も厳格な解釈を保っているのは、世俗化したイラクやシリアなどでなく、穏健派とされているサウジアラビア王国である。ウサマビンラディンは、サウジの出身だが、コーランに忠実で愚像を拒否するイスラム教徒なら、だれでも原理主義者といえるだろう。

 アメリカのイラク攻撃についていろいろな動機の分析がある。当初の名目、大量破壊兵器の存在は、ブッシュ政権が本当にそう信じていたのかどうか、未だに疑問が残る。また、フセイン独裁政権を倒して民主主義の国へ、というのも、あとでつけたした理不尽なものだし、ビンラディンとのつながりなどは誰も信じていない。

 そうかといって、当初よくいわれていた石油利権ねらいや、ブッシュ・パパが湾岸戦争で果たせなかった敵討ち、という俗説には簡単に乗りかねる。そこで行きつくのが、アフガン攻撃も含め、イスラム国に取り囲まれているイスラエルへの援護射撃である。

 アメリカがとり続けてきた世界戦略は、終始、悪の枢軸・北朝鮮やイランなどの核技術が反イスラエル国に流出することを阻止することだった。旧宗主国で、イスラエル建国のきっかけを作ったイギリスではなく、なぜアメリカがここまでイスラエルの肩を持たなければならないのだろうか。

 アメリカの石油メジャーズは、昔からサウジ、イラン、イラクをはじめとする産油地帯の国情、民族、宗教などについての深い研究成果を持っていた。したがって、イラク進攻がこのような結果をもたらす可能性は、アメリカ内部で十分予測がついたはずだ。

 にもかかわらず、ブッシュが突っ走ったのはなぜか。アメリカの支配層に隠然たる勢力を保つユダヤ人の存在、ロビイストの活躍がささやかれる。一方、キリスト教原理主義、なかんずくプロテスタント福音派で、ユダヤ復興・千年王国到来の預言を信ずる一派がブッシュの支持層であり、ブレーンになっているという説もある。

 前者のユダヤ人の支持や票を失いたくない、というのはわかるような気がするが、原理主義の方はどうであろうか。ブッシュのとりまきにそういった信者がいたにしても、ブッシュ自身が盲信者でないかぎり、予言の解釈で外交をし、戦争を始めることなどあるだろうか。中には、そうとでも考えないととても説明がつかない、という人もいる。

 ブッシュは、中東和平を任期中(来年1月)に実現させると言明した。ライス国務長官も「ここと思えばまたあちら」の東奔西走の活躍ぶりである。しかし、彼女の言動を見ていると、イスラエルの右派・リクードに耳を貸してもパレスチナの選挙で勝利したハマスを非難する態度に変化はない。ブッシュの成功は祈るが、これまでの例にもれず大ぼらの続編にすぎない、と見た方がよさそうだ。

 「逝きし世の面影」氏がおもしろいことを言った。<イスラム教は、キリスト教をバージョンアップしたもので、教義の内容は殆ど同じものです。ウインドウズ95とXPかビスタの違い程度>。なるほど、これは至言だ。95のフローチャートでビスタを書き換えるなど、同じウインドウズの神を信じていても承伏できるわけがない。

 「サラムアレーコン」。イスラム教徒ならどこの国にいっても通用する「こんにちは」で、平和を意味する共通ソフトがそのまま利用できる。それを、進歩をはばむ遅れた古くさい宗教とさげすまされ、服属を強制されれるようなことがあれば、身をなげうっても抵抗する、いわゆる「聖戦」ということになるのだろう。

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コメント

日本の海外ニュースは欧米の通信社を経由した入ってくるので、欧米的視点がどうしても入ってします。
中東のイスラム諸国は特にそうです。
一般に宗教心が篤いと思われている、中東イスラム諸国で、生活するうえで宗教が一番大事と答えな人は3割程度だったが、欧米では、その倍近い数字だった。
私達日本人が常識的に考えている世界と、現実の間には差があるようです。
昔、宗教紛争は、信じている聖典が違うから揉めるのだと思っていたら、どうもそうではないらしい。信じている経典が同じだから揉める。
例えばユダヤ教徒は旧約聖書を信じていて、キリスト教徒は新約聖書だと思っていたら間違いで、キリスト教は旧約聖書+新約聖書で、イスラムは旧約聖書+新約聖書+コーラン。
日本人的には、みんな仲良くやれそうですが一神教的には、似ているところが揉め事の根本原因らしい。

投稿: 逝きし世の面影 | 2008年3月 7日 (金) 11時21分

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