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2008年2月21日 (木)

葛飾土産

 ご存じ、永井荷風の小品である。晩年、浅草・向島を遍歴する荷風の住まいは、江戸川東岸の市川にあった。このあたりの都会離れした日本風の自然環境も、また荷風をひきつけてやまないものだった。
 
 「去年の春、わたくしはもの買いに出た道すがら、偶然茅葺き屋根の軒端に梅の花の咲いているのを見て、覚えず立ちどまり、花のみならず枝や幹の形をも眺めやったのである」
 (中略)
 「わたくしは梅花を見る時、林をなした広い眺めよりも、むしろ農家の井戸や垣のほとりに、他の樹木の間から一株二株はなればなれに立っている樹の姿と、その花の点点として咲きかけたのを喜ぶのである。いわゆる竹外の一枝斜めなる姿を喜び見るのである」

 2008_02210001 西高東低の気圧配置がゆるんだ浅春の日差しにさそわれ、そんな梅をさがしに出てみた。荷風のいうように、「近年市街と化した多摩川沿岸、荒川沿岸の光景」とは、まだここは差がある。最近ニュース種となった鉄筋不足の超高層ビルを含む駅前の2棟がいやに目立つぐらいである。

 茅葺き屋根の農家も10数年前は4、5軒見た気がするが殆ど代がかわり、分譲、戸建てなどの敷地となった。たった1軒、老婆が頑として処分を許さないという茅屋があるが、見るも無惨な姿(上)である。もはや鑑賞には絶えられない。

 荷風の見た農家の梅に似た樹は、たまに見かける。しかし今様の洋風白壁と庭いっぱいの駐車スペースでは絵にならない。ようやく校舎以外は荷風の頃と変わっていないはずの小学校校庭に1枝を見た。少子化のせいか、やや小人数の低学年生が1クラス体操をしていた。
2008_02210005

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散策」カテゴリの記事

コメント

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偶然というか、奇偶というか。小生も荷風散人小説・随筆"裸体"中央公論社(昭和29年3月刊)を読んでいました。巻末に、
"荷風戦後日歴”昭和廿一年一月一日から、仝十二月卅一日まで、の日禄を通読していた所です。市川に転居したばかりでした。

>三月初六。鶯頻りに鳴く。近巷の梅園到る処満開なり。農家の庭には古幹に苔厚く生じたる老梅あるを見る。東京には無きものなり。…略。
三月十五日。晴。春風嫋々。市川駅前の闇市にて一老婆ふかしたる里芋売りゐたるを見、花見頃のむかしを思出でゝこれを購ふ。但し一つ一円とは驚くべし。…略。

休題。小生今日石焼き芋を商う小店の前通り、里芋にはあらじ、さつま芋也、一本百八十円也とは、いとおかしけれ。呵呵。

投稿: tani | 2008年2月21日 (木) 16時25分

奇遇・・・、これがないと文学も小説もなりたたない。
里芋1つ1円。同年同月、食べ物の恨みで片岡仁左衛門一家5人殺される。
共に生き抜き、梅愛でる電脳空間で兄のおそばに。
今夕餉に、ササ一本追加いたします。bottle

投稿: ましま | 2008年2月21日 (木) 18時41分

ああ、梅ですか、大阪も月曜日まで小雪がチラつき寒かったんですけど、ここんとこぽかぽかし始めて、近所のお家の庭でもかなり満開に近かったですよ。

投稿: 三介 | 2008年2月22日 (金) 00時12分

梅があれば梅干しもある。
肉厚でぽっちゃり。日の丸弁当のまん中に於くといい石破大臣。今日もがんばって!!。

投稿: ましま | 2008年2月22日 (金) 11時47分

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