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2008年2月 8日 (金)

相撲は憲法適用外?

 大相撲時津風部屋の序ノ口力士、時太山(当時17、本名斉藤俊さん)が昨年6月に急死した事件で、先代時津風親方ら4人が逮捕された。これに対して、相撲協会の北の湖理事長が記者会見で「長い歴史の中で力士が逮捕されたことはまことに遺憾で残念だ」という趣旨のコメントを読み上げたという。

 声明文の全文はわからないけれど、上に掲げた文言は各紙共通しているのでまちがいなかろう。この内容をおかしいな、と思ったのは私だけであろうか。

 まず、遺憾で残念なのは「力士が逮捕されたこと」で、協会や理事長としてのありかたや責任には全く触れず、「長い歴史」とか「力士が」などの修飾語をつけ、まるで「逮捕した警察がいけない」といわんばかりに聞こえる。

 また、力士が、と言いながら前の親方が逮捕されたことには全く触れていない。親方はすでに除名処分にして縁を切ったから、これも無関係と言いたいのだろうか。落語に出てくるせりふ「へい、当家にも息子がおりましたがあれは勘当しました者で、親でなければ子でもありません。煮て食おうと焼いて食おうとどうぞご自由に」を思い出す。

 ちょんまげを結ったことのある者以外に手を触れさせない社会、国技という特異な構造の中で、閉鎖的な利権や地位を得ようとする勢力が、なにかを必死で支えている。伝統が大事なことは当然である。しかし、国民と相撲ファンあっての伝統である。

 厳しい訓練としつけ、これも異議をさしはさむものではない。しかし人権を無視し、憲法の精神に違反するようなことまでは、誰も許していない。これは朝青龍の処分やバッシングの中にもひそんでいる。ちなみに憲法の条文をあげてみよう。

 第十三条 [個人の尊重]すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
 第十八条 [奴隷的拘束及び苦役からの自由]何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
 第二十二条 [居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由]何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。(②略)
 第二十七条 [勤労の権利義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止](①②略)③児童は、これを酷使してはならない。
 第三十三条 [法定手続の保障]何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 伝統だから、しきたりだから、教育だから、特殊な社会だからといって、基本的人権を無視してもやむを得ないという風潮が、かりそめにもあるとすれば問題だ。横綱審議会委員や協会関係者の言動になにかそういった気配が感じられるのだ。

 自衛隊の存在にもそれが言える。日米同盟があるから、または、すでに現実が先に進んでいるから憲法は軽視していい、ということにはならない。それが通るようでは、法治国家の転覆を意味する。相撲とは全く次元の違う話だが、憲法改正をぶちあげ、途中で放り投げてしまうような政治が、そうした風潮にしたのでなければいいのだが。

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コメント

一昔、しごきで死んだといえば大学山岳部。
もっと昔は、私的制裁で有名な旧日本軍。
今回は、相撲部屋。

共通点は、
1)死ぬのが新人であること。
2)組織の拘束時間が24時間であること。
3)組織が『美しい伝統』とか『輝かしい伝統』とか『歴史』や『伝統』を強調するところ。
などの同じような傾向があるようです。

1)は先輩(コーチ)の力量不足を如実に物語っている。
2)はやはり逃げ場が無かったことが最悪の結果を招いている。
3)はその組織がが主張している美しい伝統や輝かしい伝統に、根本的に問題が在る可能性が在る。

相撲協会は新人教育を、相撲部屋単位で行うのではなく、協会として一定期間責任を持って行うような体制にしないと、時間がたてば今後も懲りずに繰り返される恐れが在る。

投稿: 逝きし世の面影 | 2008年2月 8日 (金) 17時20分

逝きし世の面影 さま
いじめ、暴力 責任逃れ。これが文部省管轄とは。教科書検定よりこっちの方が青少年育成によほどマイナス。

投稿: ましま | 2008年2月 8日 (金) 21時32分

今晩は、ましまさん。
お酒にしても、お相撲にしても、元々神事やったはずやのに・・。
もと親方は神さんにどんな言い訳をしはるんやろう?
「口裏合わせ」で、誤魔化し損ねました
かな? それとも「あの」程度で死ぬようになった現代の若者の「虚弱」を逆恨みし続けるんやろうか?ワシらの時代はもっと「タフ」やった、と。
もしそうなら、「神事」が科学的合理トレーニングに「打ち伏せられる」のも、ゆえアリやね。

投稿: 三介 | 2008年2月 9日 (土) 00時03分

アマにいてる頃、近所の兄はんの影響で、相撲は時津部屋の始祖、双葉山の全盛をよう知ってまんね。男女川という横綱もいてました。兄はんは呼び出しのまねが上手で、その声色は今でも変わりまへん。
兄はんは同時に野球ファンで、甲子園近くに住む投手・若林の家まで歩いて押し掛けたもんです。バッテリーは土井垣はん。
 三介さんのおかげで、子供の頃のいい夢見させてもろた。おおきに。

投稿: ましま | 2008年2月 9日 (土) 10時10分

 相撲界に逮捕者が出たことに衝撃を隠せないのでしょう・・・。
 今後、このような悲劇が起きないよう、どうしたら良いか考えた方がいいかもしれません・・・。「”国技”だから・・・」と閉鎖的な体質は改めるべきではないでしょうか・・・? 
 逮捕された親方・・・、容疑を否認しているようですが、真摯に反省しているんでしょうかね? 
 「現役時に素晴らしい成績を残したからと言って、優れた指導者になる」とは限りませんが、問題を起こした前時津風親方(元小結双津竜)ってどんな力士だったんでしょ? 

投稿: 棘入り《妄言録》!  | 2008年2月10日 (日) 04時56分

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