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2008年2月12日 (火)

入門編・戦争とは11

 「人間はなぜ戦争をするのでしょうか」の4回目です。サ・ケ・カ・ナ・シの順で「差別」、「経済」を話し、前回「カ」の「拡張」まできたのですが、その「拡張」は意味が広く、まず「領土拡張」について述べました。

 今回は「軍備拡張」です。現代の軍備拡張は、領土拡張のため、あるいは領土侵略をふせぐため軍備を固めておく、つまり明治維新のあとの政策「富国強兵」とはすこし違うようです。仮想敵国を頭にえがき、相手がこういった軍備をもっているなら、こっちはそれ以上の軍備を持たなければ危ない、というバランス感覚で議論されます。

 ソ連崩壊以後、世界の警察官を自認し、一国最強になってしまったアメリカはすこし違うかも知れません。世界経済や国内軍需産業との関連をあげる人もいますが、「テロとの戦い」という、今までにない戦争のかたちになっているため単純に判断できません。

 それはさておき、各国が軍備にどれだけお金を使うか、兵隊をどれだけ準備するか、またどんな新兵器を開発するかなどは、お互いの競争になります。また自国だけでは不十分と見れば、なかまの国を作って軍事同盟を結びます。「軍人に兵器を持たせるとどうしも使ってみたくにるものだ」ということは、軍人自身が証言しています。また、「相手の軍備が整わないうちにたたいてしまおう」という発想、「先制攻撃」への誘惑にもかられがちです。

 こういった方向へのエスカレートも「拡張」といえるでしょう。この間、パキスタンでブット元首相が狙撃され、死亡しました。第一次世界大戦もオーストリア皇太子の暗殺から始まっています。オーストリアと同盟関係にあるドイツが、犯人をだしたと見られるセルビアに宣戦布告しました。

 これを助けようとロシアが動き、また同盟関係にあったイギリス、フランスなども参戦してとうとう世界規模の戦争になってしまったのです。遠く離れた日本は関係ないのですが、日英同盟がありました。イギリスから同国の商船がドイツ海軍にねらわれているので守って欲しいという要請です。

 日本は、「しめた」とばかり、中国の山東省に利権を持つドイツの租借地を奪い取ることにしました。ドイツはこれを察して、中国に返還してしまおうと考えます。イギリスも、そこまでは頼んでいないのであわてて依頼を取り消しにかかりました。

 中国も中立を宣言していたのにもう間に合いません。火事場泥棒のような戦争に日本が手を出したのも、軍事同盟が後ろ盾としてあったからです。そういった例は戦時体制の中では珍しくありません。このあと、日本は軍部独走がめだつようになります。日本国憲法では、第六十六条で「文民支配」の原則をかかげていますが、こういったエスカレートがないようにチェックする目的があります。 

 軍備拡張競争をはじめると、際限がありません。相手より絶対優位に立てば、あらゆる交渉ごとが有利に進むと信じられている面もあります。しかしこれは刃物をつきつけて相手を脅すのと同じです。限界をこえれば戦争になってしまいます。

 そこで、「ミリタリーバランス」などということがよく言われます。対敵している国の軍備がバランスしている間は戦争にならない、不均衡こそ危険だという考えです。こういった思想のもと、第一次大戦以後「軍縮会議」が開かれ、かつては、軍艦、米ソの間ではミサイルなどの数量を制限してきました。

 しかし現在は、核拡散防止条約が公正・公平の原則からはずれているとしてうまく機能せず、ミサイルの本数などもアメリカのミサイル防衛システムの一方的配備で、この先の実効性に疑問を持たれています。このように、世界は混沌とした状況から抜け切れていません。

 

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