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2008年1月 2日 (水)

福田首相と孔子

 旧臘、福田首相が中国山東省・曲阜にある孔子廟を訪れ、訪中のしめくくりとしたことに大きな関心をもっている。これに政治的な意義づけをしたマスコミ報道はまだ見ないが、首相の個人的関心からきているとしても、その真意を聞いてみたいものだ。

 このブログでも断片的に書いたことがあるが、私は日本の弥生時代を作ったのは、山東省からの渡来人で、われわれの先祖に関係すると固く信じている。それは、孔子の生きた春秋時代にもあったことだろう。また、近代では、第一次世界大戦で日本軍がドイツ租借地のある山東省に攻め込み、その後の日中関係を有史以来最悪なものにするきっかけを作った。

 孔子で代表される儒教は、すくなくとも聖徳太子のころに仏教と共に定着したと見られる。当初は政治規範として、また江戸時代から戦前までは庶民の道徳律にも深く根ざしていた。共産・中国で毛沢東から批判を受けたこともあるが、中国、朝鮮、日本を結ぶ消すことのできない長い紐帯である。

 首相は、同地で論語の「温故知新」をもじった「温故創新」で揮毫をした。久間氏が書いた「防衛省」の看板より自信に満ちた味わいのある字に見える。私が関心をもつのは、以上のような観光地的要素からくるものではない。孔子の生き様と見えにくい首相の政治理念に重なりあうものをがあるかと思ったからである。

 孔子は周公の時代の政治・文化を理想的なものとする啓蒙主義者で基本的には、歴史に教訓を求める保守主義者である。しかし、群雄が割拠し戦乱のたえない春秋時代には、彼の説く政治改革をもってするしかないという強い信念のもと、各王侯を歴訪行脚した。

 だが、これは諸国に容れられるところとならず、多くの弟子たちを経て漢以降に、ようやく国教として確立されることになる。そしてその目指すところは、教養の整った中央集権的官僚組織であった。またその政治倫理には、「仁」を置いたのである。

 「己立たんと欲して人を立たしめ、己達せんと欲して人を達せしむ」や「己の欲せざるところを人に施すことなかれ」、前回の総裁選で安倍候補擁立を見て、身を退いてみたりするのを、そうだとはいわない。しかし、儒教的な発想がなければ理解しがたい行動だ。

 また、儒教や啓蒙主義の神髄は合理主義と実践にある。出身地の魯の国で大臣の地位を得た孔子が、理想の実現に向けて改革を推進しようとした。ところが、豪族の総反撃にあって失敗、国外に出奔したこともある。孔子にはつかみにくいところがあるが、それにもまして福田首相の向かう方向が明確でない。

 「美しい国」などというきなくさい「おまじない」など、もううんざりである。民の求めるところを、実践で力強く推し進め、「古きをたずね、新しきを創る」に邁進する福田首相であれば、たとえその後継者が実現するにしても支持をしたい。
 

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コメント

今年もよろしくお願いします。
私は弥生人の起源については少し違った考えをもっています。アドレスの「混成語・日本語」にも書きましたが弥生時代の始まりは紀元前1000年にはさかのぼるのではないか。そしてずっと時代が下って、中国大陸が動乱であった時代に山東省-遼東半島からやってきたのは亡命者であった天皇家の祖先につながる人であった、と考えています。
それはともかく、福田首相が孔子に言及しつつ、「古きをたずね、新しきを創る」と言ったのは、いろんな意味で意味が深いようです。誰が「古きをたずね、新しきを創る」のか。民自身が自ら「新しきを創」らねばと言うのが私の意見です。

投稿: 北原真夏 | 2008年1月 2日 (水) 22時07分

北原真夏 さま

 早速のコメントありがとうございます。
 タミル語起源説、私も3回ほど大野さんの本を読み返しましたが難しくて理解できませんでした。
 中国起源説は土井が浜の人骨など形質学、ジャポニカ米と水耕の伝播などから、南方からの移住があったとしても縄文の頃と考えています。
 福田さんは右傾化した小泉・安倍路線をひきもどす最後の人材になってほしい、と思います。

投稿: ましま | 2008年1月 3日 (木) 09時09分

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