入門編・戦争とは4
赤木智弘さんというフリーターの方が、「希望は、戦争」という論文を書き、去年の論壇をにぎわしました。このブログでも一度取り上げましたが、『若者を見殺しにする国』という単行本をだされ、これを見ないうちは真意がわからないかもと思って、正月をはさんで読んでみました。
読む前とそう大きく変わった点はなかったのですが、論拠のあげかたや独特な分析のしかたなど、読み手を引きこんでいく手法などはなかなかのものです。わが子より若いお方ながら、学者・評論家先生の論文よりずっと共感をもって読めました。これからは“さん”でなく“氏”と呼ばさせていただきます。
ただひとつ、重大な指摘をさせていただきます。それは「平和」であることが、フリーターから抜け出せないという格差を固定するものであるから、「戦争」の中で平等を獲得するのだ、という文脈です。ここでは「平和」の反対は、いきなり「戦争」という極端な飛ばしがあります。
氏の論述で非常に目立つのは、多くのものごとを「類型化」することです。まず自らもはまってしまっている「俗流若者論」などという「年代区分」、正社員とフリーター、都会と地方、強者と弱者、男と女そのたもろもろです。
自然科学では類型化が進歩の基礎かも知れませんが、「世の中にはAとBしかない、それは厳しく対立する」という決めつけ方はすこし乱暴なのではないでしょうか。「平和」でないことは「戦争」だけではありません。暴動やクーデター、ゼネストとか大政変、そして自然災害でさえ続発すれば、平和な世の中とはいえないでしょう。
9.11テロの直後、ブッシュ米大統領は「これは戦争だ」といって、アメリカ国民がこれに立ち向かうように演説しました。前にも言ったとおり、戦争は国民国家が国民国家に対し、国軍と軍備を投入して争うことです。アフガンのタリバン政権を倒すまでは、たしかに戦争だったかも知れません。しかしその後は戦争の相手国がなくなり、その候補として「テロ支援国家」というものを決めました。アメリカのいう民主主義を取り入れない国は邪悪、テロリストは敵、敵とは戦争、つまりAかBかです。
結局アメリカの戦争は、どこの格差是正に寄与したのでしょう。世界的に見ればますます戦争が格差を拡大させているではないですか。日本がよくなれば、他の国、民族は差がついてもいいのだ、とは赤木氏もお考えにならないと思います。「希望は……」のあとは是非変えて欲しいものです。
(追記)「戦争とは」のシリーズは、カテゴリ(左帯)を新たに設けました。関連記事はそこでご覧ください。
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コメント
こんにちは。
私が赤木氏の主張に疑問なのは、「希望は戦争」であり、誰かが戦争を起こしてくれて、格差の上位にいるものを引き摺り下ろしてくれるという論法で、そこには自発的な行動が何も無いことです。棚からぼた餅を望んで座っているだけです。
本来なら、「希望は革命」であって、自発的に行動を起こし現状を変革しようと言うのならわかるのですが。
これが、無気力な彼らの限界なのでしょう。
投稿: 眠り猫 | 2008年1月 5日 (土) 13時33分
眠り猫 さま
赤木氏自身は無気力どころか、相当計算のできる努力家、と見ました。「希望は、戦争」も、彼独特のレトリックです。本人は否定するかもしれませんが。
このような環境を作った政治、それに協力したマスコミ・労使団体そして社会に対する切り込みは、目新しく鋭い物があります。
左派の欺瞞性を暴くため、あえて「希望は戦争」というアンチテーゼを持ち出したのではないでしょうか。
戦争の実体をつかめていない点と、責任転嫁が先にくるのは、左右共通にみられる現象で、この通弊は持ち合わせているようです。
投稿: ましま | 2008年1月 5日 (土) 18時02分
はじめまして、安全保障について調べていたら、ついこのページを見つけてしまいました。
私はどちらかと言えば保守の人なので、
コメント書いてよいか考えましたが、
迷惑であれば削除お願いします。
まだ反戦塾の入門4までしか読んでないのですが、
左派や護憲といわれる人が、
安全保障について、どのようなお考えをもっているのだろう?そういう疑問にいつも突き当たるのです。
右派の論評はどちらかというとリアリズムを前提に論じています。(おかしな論者も多いですけどね)
左派の論評は理想主義的価値観が強いと思うのです。
私は世界全体がそのように向かう事と、現実問題としての準備は別に考える必要があると考えます。
1についてですが、
戦争におけるメカニズムは 小説などの説はドラマ的要素が大きすぎて不適切なだと感じます。
2についてですが、
国際連合はともかく国際連盟は平和の為に作られたといえるでしょうか?
3についてですが、
歴史認識の違いは左派と右派では どうも違いすぎて、書ききれません。
ただ私が思うのは
・左派は現在を支点とし そこから過去と未来をみます。
・右派は過去を支点とし、その流れの中の現在であり未来を見ます。
4については
「希望は戦争」を私は読んでませんし、アメリカ非難は妥当だとは思いますので、特にありません。
一応、簡単ですが、感想です。
私は左派…護憲派の理想、つまり将来向かうべき指標として、それを掲げる事はすばらしいと思うのですが、現実問題部分の段階がいくつも飛び越えているように見えます。
左派の人たちが、右派の人の論理を抱合(説明)したものを構築できるのなら、私は左派になれると思うのです。
長文失礼しました。
投稿: morita | 2009年5月20日 (水) 10時39分
morita さま
5/20付けエントリー(番外)をご覧下さい。
投稿: ましま | 2009年5月21日 (木) 12時46分