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2008年1月17日 (木)

入門編・戦争とは6

戦争と国連
 「入門編・戦争とは5」(「戦争とは」シリーズのバックナンバーは、左らんのカテゴリをクリックしてください)で、第一次世界大戦であまりにも破かいが大きく、多くの市民が犠牲になった反省から、戦争放棄を定めた「不戦条約」が日本を含む多くの国により結ばれた話をしました。

 この時、アメリカやイギリスなど大国の間で「自衛のための戦争は含まない」とか「自国の安全に大きな影響がある地域を防衛するのは例外」といった、暗黙の了解がありました。したがってその口実さえ使えば合法的な戦争ができてしまうわけで、再び第二次大戦で大きな被害をだしてしまいました。

 日本も以上のような口実のもとで戦争をはじめました。そして昭和20年の敗戦の年、戦いに勝った連合国が中心になって国際連合を作り、国連憲章を宣言しました。これが現在まで続いているわけです。

国連憲章の前文は、次のようにうたっています。

われら連合国の人民は、
われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨禍から将来の世代を救い、
基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、
一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上を促進すること、
並びに、このために、
寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互いに平和に生活し、
国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、
共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、
すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、
これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。

 ややむつかしいかも知れませんが、前半の精神をうたった部分がわかればいいと思います。国連憲章で「戦争」という言葉が使われているのは、この前文の中だけです。本文で「武力行使」とか「軍事行動」という言葉におきかえているのは、戦争はいっさい認めないという精神からです。そして、戦争と言う言葉を使わなくても、他国に武力を用いる場合を想定して、その制限や手続きをこまかく規定しています。

 国連は、戦争や平和維持のことだけを仕事にしているわけではありません。しかし、一番大きいのは、集団的安全保障(「集団的自衛権」とは違う)の機能でしょう。国連加盟国に対する軍事攻撃には、加盟国が一致してこれに反撃し戦争を防ぐ、という取り決めです。

 国連憲章では、国連独自の「国連軍」のようなものの想定をしていますが、そういったものはまだ組織されていません。指揮を誰がとるか、訓練・装備はどするのかなど、これからも簡単に作れないでしょう。従って、どうしても最近多く見られる多国籍軍のような形になります。

 この集団的安全保障を発動するためには、安全保障理事会の決議が必要です。しかし、米露英仏中の常任理事国には拒否権があり、簡単に議決へ持っていくのが困難です。アメリカのアフガンやイラク攻撃には、これを認める明確な決議がないまま実施に移されました。

 国連決議というのは、多くの場合いろいろな国の主張が入るため玉虫色になりがちで、やはり拡張解釈や独善的な判断が入りやすいことも事実です。国連憲章には、この集団的安全保障のほかに、「自衛権」をうたった条項(第51条)があります。

 これは、加盟国が武力攻撃を受けた場合に、上記の集団的安全保障の措置がとられるまでの間、自衛のために抵抗する権利まで否定しない、ということで、その自衛活動を行使した場合には、直ちに安保理に報告しなければならないことになっています。

 位置づけとしてはあくまでも、緊急避難、例外措置といったところでしょう。この自衛権と列記されているのが「集団的自衛権」です。これは、自衛権といっても中南米諸国のような小さく軍事的に弱体な国では、大国の攻撃に対抗できません。

 そこで、アメリカを含む各国が共同して攻撃に対処できる権利を確保しておきたい、というアメリカの要望があり、その他の大国もその言葉をうまく利用できることにメリットを感じて賛成した、といいます。

 アメリカは、9.11の同時多発テロ攻撃を受け、首謀者とされるオサマビンラディンを、逮捕引き渡さないアフガンのタリバン政権に対し、「自衛のため」といって攻撃を開始しました。自衛には直接関係のない日本国は、米軍と協力して戦争に参加する理由がありません。

 しいてあげるなら、日米安保条約による集団的自衛権の行使ということになりますが、これは同条約、日本国憲法さらには国連憲章第51条の趣旨からみても、そうとう無理な解釈をしなければならないことになります。

 国連および国連憲章の本来の精神は、武力行使をするためのものではなく、あくまでそれを防ぐことにあります。だから、国際貢献とは武力行使に協力することだ、と決めつけるのは、まちがっているのではないでしょうか。平和憲法を持つ日本の国際貢献は紛争の回避につとめること、そして平和を回復させることに全力をかたむけるべきだと思います。

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