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2007年12月10日 (月)

アメリカとイラクの国民意識

 前回のエントリー「イランの脅威、宙に浮く」を書いたのが先週土曜日の8日、翌日のTBS「サンデーモーニング」で出席のコメンテーターが、拙記事とほぼ同様な解説をしていたので驚いた。実はアメリカの実体やアメリカ人の考えなど新聞に掲載される外電などで憶測するだけで、内容に自信があるわけではない。それだけに、その考えを共有する人がいるということは、ブログに「共感」のコメントをいただいたのと同様、心ひそかに快哉を叫ぶことになる。

 これだけ日本に長く住み着いていても、「日本人はこうだ」とか「こう考えている」などと断定して物事を判断できない。むしろそうすることは危険ですらある。しかし、行ったこともない外国のことでも、いくつかの伝聞事象をつなぎあわせ、「こういうことかも知れない」という仮説を立てることはできる。

 今日は、そのようなアメリカ人論とイラク人論の栄養となった話を上げておくことにする。まず、アメリカについては、毎日新聞ロサンゼルス支局・国枝すみれ記者の「アイ・ラブ・ミー」というコラム(07/11/26)を紹介する。

 行儀は悪いし、敬語は使えない。物質主義も、自分に甘い風潮。そういった若者へのマナー・バッシングには、自ら過去を顧みて組みするつもりはない、という。しかし……、(以下引用)

     (前略)そんな私でも、米国人には驚かさ
     れる。頑張らなくても、ご褒美を欲しがる。
     「アイ・デザーブ・ベター(私はもっと良
     い生活をする資格がある)」と、人生をリ
     セットする。(中略)

     サンディエゴ大の調査によれば、米国人は
     ナルシシスト化している。「私が世界を支
     配すれば、もっとよくなる」「自分の好き
     なように人生を生きていける」などの質問
     を使い、大学生のナルシシスト度を測った
     ところ、82年から一貫してその度合いが
     上昇しているというのだ。

     人の気持ちを推し量ることができず、自信
     満々に自己主張し、批判されると攻撃的に
     なり、人助けより自分の利益を優先する、
     というナルシシスト。年寄りよりも若者、
     女よりも男に多く、米国人は世界で最もナ
     ルシシスト度が高い。

     米国の保育園や幼稚園では、幼児が「私
     は特別、私を見て。ほら、とても特別な子
     が見えるでしょう。それは私」と歌いなが
     ら、お遊戯する。きらきら星の節に合わせ
     て、「スペシャル・スペシャル・スペシャル・
     ミー」と歌うこともある。(後略)

 日本のナルシシスト度も上がっているようだが、次は、イラクについてである。この方の出典は古い。安全保障問題の専門家・松井茂氏が1990年に書いた『イラク』(中公文庫)からで、その小見出しには「間違いだらけのイラク観を正す」とある。アメリカ侵攻以来、なんとなく「ダメなイラク国民」観が定着している現在、改めてこれをクローズアップしておきたい。

     イラクは先般の武力によるクウェート併合
     で、国際的非難と経済制裁を受けている。
     だが、イラクが中東で最も豊かな可能性を
     持つ国であることは、紛れもない事実であ
     る。その理由を次に列挙しよう。
     
     ① 石油の豊富な埋蔵
     ② 肥沃なメソポタミアの大平原
     ③ 水量の豊富なチグリスとユーフラテス
      の両大河
     ④ 教育水準の高い千七百万の国民
     ⑤ 中東でも最も宗教的因習からの脱皮
      が進んでいる社会
     ⑥ 中東で最も貧富の差が少ない社会
     ⑦ 中東で最も女性が進出している社会

 これは、フセイン大統領の独裁政権の下のことで、⑤⑥⑦については、最近の宗教対立、そしてシーア派とスンニ派のイスラム同士の抗争や、同じシーア派のイランからの影響などが声高に伝えられているので、違和感を持つ人が多いかも知れない。

 しかしイラクのシーア派が、ホメイニ革命の影響が強いイランの支配下にあるように見るのは、明らかな誤解である。フセインの独裁政治からの解放はいいとしても、ほとんどのイラク国民が米軍がくる前の暮らしの方がよかった、と思っていることだけは違いなさそうだ。

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コメント

良いエントリー記事ですね。
大手のマスコミ、新聞に、これ位の内容の記事が載ることを期待する事は無理なんでしょうか。?

「イラクを民主化する』とブッシュ大統領が言っていたが、もともと中東で一番民主主義的な国だったわけで、アメリカの強制民主化宣言とは何とも皮肉なジョークだったわけですね。

投稿: 布引洋 | 2007年12月12日 (水) 11時58分

布引洋 さま
おほめいただき、痛み入ります。
マスコミだって複雑な要素があるわけでなし、この程度のことが書けないわけがありません。
政治家の近視眼施策がそのまま移ったのか、日々取材に追われ、目先の些事優先の癖が身に付いてしまったのか。
いずれにしてもさびしいですね。

投稿: ましま | 2007年12月12日 (水) 15時04分

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