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2007年12月 1日 (土)

「希望は戦争」

 赤木智弘さんという方が論壇誌などをにぎわしている。雑誌は週刊誌を含めて月に1、2冊買う程度なのでその論文に接することもなく、「『丸山眞男』をひっぱたきたい 31歳、フリーター。希望は、戦争。」という題名は、どこかで見たな、という程度の知識しかなかった。

 それは、『論座』1月号に掲載されたもので、同誌が識者の反論を含めあとを追っているほか、NHKや『中央公論』、『SPA!』などでもとりあげているようだ。このブログが「反戦塾」なら、「希望は、戦争」ではやはり「ほっとけない!」ということになる。

 とりあえず図書館へ行って、雑誌のバックナンバーをひっくりかえしてみた。本当をいうと、丸山眞男の活躍や批判、そして全共闘や新左翼などというのも、私が就職したあとのことなのでくわしく知らない。日比谷公園のレストランや浅草橋駅を焼き討ちしても権力に打撃をあたえるわけでなし、赤軍派、内ゲハなどは、正気の沙汰じゃあないな、と思っていた。

 赤木さんの論文要旨を、毎日新聞(11/22)の対談記事で本人自身が語っているので引用する。

     「戦争がしたい」って要約すると単なる破
     壊願望だと思われるし、それを否定すれば
     「あれはレトリックであって、赤木の本心
     は別にある」と言われます。そうじゃなく
     て、本心は両方にあるんです。
     自分たちフリーターは、働き続けても、昇
     給はなく安定は望めない。何とか社会階層
     を流動化させたい、変えたい。でも、従来
     の左派が代表したのは正規労働者であっ
     て、つまり我々は左派からも見放されてい
     る。だから、階層が流動化する機会として
     は、戦争だって希望になるのではないか。
     本当は戦争は回避したいのだが、というの
     が骨子です。

 これに対して、同誌の別号で佐高信、福島みずほ、斎藤貴男、森達也など各氏の反論、さらには鶴見俊輔氏の感想などがある。それらを読み比べてみて、一番スンナリと腑に落ちたのは、最初の赤木さんの論文だった。

 反論した各氏の主張は、やはりどうしても陳腐なものに見える。左翼、革新など古い容れ物しか用意されておらず、赤木さんへの答えになっていないのである。かといって、赤木論文を肯定するわけではない。

 フーリターを巡る状況と不当な社会構造の固定化をさらけだして迫るのはいいけど、だから戦争という非日常と右翼の論理に活路を求めるという、森達也氏のいう「安易な書き飛ばし」や矛盾撞着が至る所に見られるのは確かだ。遅れてきて論争に加わる気は全くないが、以下の2つのことだけは指摘しておきたい。

 ひとつは、戦争で人間の尊厳は決して高まらない。むしろ逆である。それは、日中戦争、ベトナム、ボスニア、イラクなどをみれば容易にわかる。新兵をひっぱたいたのは下層階級から出た古参兵で、被害者にあったのがインテリに多いのは事実である。しかし、その上には幹部教育を受けていきなり将校になった特権階級が安逸をむさぼっており、兵の膏血をしぼっていたのだ。公平さが建前だけのことは入隊してすぐにわかる。

 国のために特攻機に乗り、華々しく散っていったのも若い幹部候補生が多い。かっこよく死ねたのは彼らだけだ。初等教育しか受けずこつこつと汗水をながし、その日暮らしをしていた中年の応召兵は、フィリピンなどで一弾も撃つことなく多くが餓死しているのである。靖国礼賛にまやかしがあることは赤木さんも承知しているようだが、EUのようにやがては単なる歴史上のモニュメントと化すだろう。

 2つ目は、世代を切って、上はどうだ下はどうだという区分を設け、白・黒、敵・味方の判断基準にすることである。たとえより特徴ある区分ができたとしても、「今時の若い者は」という愚痴と同類ではないか。終身雇用・フリーター・左派・右派も、単純に区分するのが妥当かどうか、「ジコチュウ」とかナルシシストなどと誤解されないような論理と行動が必要だろう。

 赤木さんは、すでに社会から必要とされない見捨てられた人ではない。フリーター、化してフリーライターになったのだ。初心を大事に精進・発展されることを大いに期待したい。その点で「赤木さん」ではなく「赤木氏」にする。

この記事の続編はこちらをご覧ください。

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コメント

こんちは、ましまさん。TB有り難うございます。
>赤木氏
面白そうな人ですね。御噂はかねがね聞いていますが、ゆっくり読んだことがありません。
何となく現代の中ガミ健次っていう趣がありそうで、興味深いです。
>左派が代表したのは正規労働者
以前、うちのログでホンの少しだけ日高六郎の事に触れましたがこの辺の話です。
かなりややこしいり話なので、続編書くのに手こずっています。
取り合えずTB2つほど送ります・・。

投稿: 三介 | 2007年12月 1日 (土) 16時42分

三介 さま
40何年も昔のことですが2年ほど労組役員をやったことがあります。赤木さんのいう「敵」です。当時もお題目だけですが「未組織労働者の組織化」という運動方針がありました。
たった1件ですが10人ばかりの労組設立のお手伝い(規約や要求書の作り方の相談に乗っただけ)をしたことがあります。
会社にまだ秘密だったので、彼ら彼女らの緊張したまなざしが忘れられません。時代の違いを感じます。

投稿: ましま | 2007年12月 5日 (水) 09時20分

マトモな大人の論理とは言えませんから、赤木氏や赤木さんより『赤木君』位がちょうど良いのでは。?

赤木君には、大人に向かって『殺人はなぜ悪いのか?』と聞く、屁理屈をこねる悪賢い中学生を連想します。
固定化した平和で安定した社会は、自分達ワーキングプアーには苦痛以外の何者でもない。
社会が流動化しなければ自分達フリーターに未来は無い、とする考えは正直な意見です。
しかし其れが何で『希望は戦争』なんですか。?馬鹿馬鹿しい。
戦争(勝ち戦)ほど、国家が一丸となって纏まり安定し強化されるものは無い。
勝つ戦争は、体制を強化することはあっても決して流動化することは金輪際無い。
歴史が教えてくれる教訓は、流動化する可能性があるのは『戦争』ではなく『戦争の敗戦』です。

『希望は革命』や『希望は敗戦』なら赤木君の説にも一利あるが「希望は戦争」ではペテン師呼ばわりされても仕方ないでしょう。

投稿: 布引洋 | 2007年12月 5日 (水) 11時33分

<『戦争』ではなく『戦争の敗戦』です

 そうですね。「敗戦」。「なり金」といいました。最下層の人(「歩」)がある線を越えると「金」になる将棋用語です。闇屋ですね。どんどん儲かりました。
 「新円切替」。どんなお金持ちも預金封鎖され、引き出せるのは世帯主が月300円、家族1人100円、どんな高給取りも給料は現金で500円まで。
 まさに赤木君万歳の時代です。ところが2年もたたないうちにもとの黙阿弥。赤木君はやっぱり赤木君のままでした。

投稿: ましま | 2007年12月 5日 (水) 13時23分

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