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2007年12月 5日 (水)

対案はいらない

 毎日新聞が、新テロ法案について「民主党の対案はどこにいった」という社説(12/5)を掲げた。同紙の報道や論評が、やや乱雑な感はあるものの、的を射たものが多くなったように感じていたが、この社説はいただけない。

 まず、「国際社会が協力して取り組んでいる『テロとの戦い』に、日本はどのような形で関与すべきなのか」という問題提起である。このブログでもたびたび取り上げているが、ブッシュ大統領の常套語「テロとの戦い」の「テロ」とは何をさすのかに、与・野党そして新聞も答えていない。

 また「国際社会」とは何か、アメリカの中東政策に批判的な国、またはアメリカ軍に協力する少数の「有志国」以外は国際社会ではないのか。産経新聞ならともかく、同紙のほかの記事を通読しているだけでも、上の前提は、使い古され、賞味期限の切れた殺し文句に過ぎないではないか。

 民主党の外務防衛部門会議が「テロ防止のためのアフガン復興支援特別措置法案」の要項なるものを作った。これを法案化して参院に対案として出さないことを、審議が進まない理由としてこの社説は非難する。

 それは的はずれだ。憲法9条を守るといっている小沢理論で、現状のアフガン情勢で自衛隊を使おうという無理、矛盾がある限り、法案などできっこない。そういう同党の論理の混乱を突くというのならわかる。その法案をださないから審議が進まないというのは、政府与党の責任転嫁に組みするものでしかない。

 国会も新聞も、テロとアメリカと自衛隊の3題話から足を踏み出してほしい。テロとはビンラディンのことか、パキスタンとの国境地帯にまだいるのか。戒厳令状態で自国の選挙ですら合意が得られないムシャラフ政権下では、アメリカが逮捕を期待しても無理だろう。

 それでは、アフガンのタリバン勢力のことか。タリバンを放逐して成立したカルザイ政権ですら、治安回復の為にはタリバンの力を借りざるを得ない、という現状のようだ。アメリカはイラクの治安回復優先のためアフガンが手薄になり、それをNATO軍が埋めて犠牲者をふやしている。

 また、中東各地で起こる自爆テロを指すのか。最近はパレスチナ問題や、イランも含めた湾岸各国の平和への模索が続いている。気のせいか自爆テロも減少の方向に向かっているようにも見える。イラクにしろアフガンにしろ、目的はどうあれ、外国軍隊がいることが治安悪化につながるという、意識が現地にあることはたしかだ。

 「悪の枢軸」を必要とする国なら別だが、テロとの戦いはすでに後処理の方向に進んでいる。自衛隊の給油活動も事後処理の一環として、継続することに反対ではない。しかし、一旦中断したものを数か月あとに復活することに、どれだけの意義と効果があるのだろうか。そのあたりを真剣に討議してもらう方が国民とって理解されやすく、国益にかなうのではないか。

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コメント

お邪魔します。
「対案はいらない」にはまったく同感です。
民主党議員が言ったように「廃案が対案だ」でいい。
政府はそれまでの民主党が対案を出すと言った事を指摘したが、毎日新聞はそれをなぞっている。毎日新聞の論説委員にも民主党と同じように幅があるようですね。
党首にも指導部にも意見をまとめる力が無い民主党にもろさがあることは事実でしょう。
しかしその事と、給油の馬鹿馬鹿しさとは無縁ですね。

投稿: 飯大蔵 | 2007年12月 5日 (水) 22時55分

飯大蔵 さま
コメントありがとうごさいます。
「テロとの戦い」や「北朝鮮制裁」に正面から疑念を持つ言論はタブーなんでしょうか。
こんな記事を書いても冷笑されるだけ、と思っていたところ、飯大蔵さまに、ご賛同いただき意を強うしています。
記事に自爆テロは減っているように書きましたが、それはイラクのことで、今日の報道ではアフガンでタリバンの犯行目標が警戒厳重な米軍・政府軍からISAF→外国大使館へと移り民間犠牲者も増えているとのこと。記事の意図するところに矛盾はないので、訂正はしません。

投稿: ましま | 2007年12月 6日 (木) 09時58分

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