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2007年4月 6日 (金)

罹災日録

[反戦老年委員会復刻版]

 四月初六。晴。五叟子が勤め先なる鮫洲埋立地の海岸には毎日三四人の腐乱せる死体漂着す。いずれも三月九日江東火災の時の焼死者なるべしという。

 四月初七。晴また陰。巻煙草配給一日分わずかに三本となる。朝空襲。正午のころ解除。人心恟々たり。

 四月初八。日曜日。半陰半晴。隣人より食麺麭(パン)を買う。一斤六円。

 五月初五。陰。午前麻布区役所に行く。途すがら市兵衛町旧宅の焼け跡を過ぐるに一隊の兵卒処々に大なる穴を掘りつつあり。士官らしく見ゆる男を捉えて問うに、市民所有地の焼け跡は軍隊にて随意に使用することになれり。委細は麻布区役所防衛課に就いて問わるべしと答う。軍部の横暴なるや今さら憤慨するも愚の至りなれば、そのまま捨ておくよりほかに道なし。吾らはただこの報復として国家に対して冷淡無関心なる態度を取らんことのみ。
   
『日本の文学』永井荷風(二)、中央公論社より。

 この時、敗戦まであと132日。今日まであと62年。

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