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2007年3月13日 (火)

鉄拳制裁

[反戦老年委員会復刻版]

ろくな授業も受けられなかった終戦前後の中学校。軍隊の蛮行を真似した「鉄拳制裁」なるものがはやった。古参兵が新兵をというのと同じパターンで上級生が下級生を襲う。「○○一歩前」「足を開いて上体を曲げろ」「歯をくいしばれ」なんていうのも、どこから仕入れたのか軍隊そのまま。

 生徒ばかりか先生まで「整列ビンタ」愛好家がいたのだから始末におえない。生徒の場合は、放課後校舎の裏など、人目につかないところに集める。制裁の理由は、「敬礼をしなかった」とか「帽子のかぶりかたが悪い」とか、軍隊の予備体験みたいなものでまあ何でもいいわけである。

 そのどれでもない場合は、「態度が悪い」というのが多用される。これがどうにも困るのである。なにがどう悪いのか皆目見当がつかない。反抗的な目つきをした、といったことかも知れないが、いわゆる「にらまれた」状態で反復攻撃を食らう危険性にさらされるのである。

 だから、教育基本法で「勤労を重んずる態度」だとか「公共の精神に寄与する態度」だとか「わが国と郷土を愛する態度」などと繰り返し「態度」が出てくると、震えが止まらなくなるのだ。「態度が悪い」の一言が内申書や勤務成績表について回り、絶対服従を是とする暗黒社会に突き進むのではないかと。

 反戦の言論を貫いたことで有名な軍人・水野広徳はこんなことを言っている。(「戦争」一家言、『中央公論』大正13年夏期増刊号)

 個人の喧嘩の原因はおもに色と慾と顔である。もっともたまには意見の衝突からなぐりあったり、思想の相違からあまかすったり、はなはだしきは貴様の面が癪にさわるとて、イキナリ通行人の横っ面をはりとばす乱暴者もないではない。国家の戦争の原因もまた個人の喧嘩と同様で、ただ色恋の戦争がないだけである。慾すなわち利害の衝突と、顔すなわち体面の保持とが、多くの場合における戦争の原因である。

 「態度が悪い」というのは「面が癪にさわる」というのによく似ている。態度がいい悪いなどという判断は個人的感情で左右される。つまり上官や上級生の体面を維持するうえで欠かせない道具になっているということだ。そういった「ガンをつけたな」的ないいがかりで、果ては戦争まで始めてしまう好戦政治家が、今でも某超大国にいるということである。

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