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2006年6月17日 (土)

自虐の効用

[反戦老年委員会復刻版]

 朝鮮の南北分断は日本に責任、という論調があります。そのひとつとして、山城幸松・金容権著『日本「帝国」の成立』(四「後は野となれ、山となれ」――南北分断の遠因)の内容を次に要約して見ます。

 日本の敗戦が間近になった1945年8月9日、ソ連が参戦して12日には朝鮮北部の清津に軍を上陸させた。

 アメリカは朝鮮半島全体がソ連軍に掌握されるのを恐れ、北緯38度線を境界とする分割案をソ連に提案し、ソ連は同意した。
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 戦後のパニックを恐れた朝鮮総督府は、声望のある朝鮮民族の政治指導者に行政権を引き渡そうとし、朝鮮建国同盟の呂運亭を適任者と決めた。そして、治安、秩序維持を委託、その他の行政権委譲の手続きも取り決めた。さらに9月6日には、同盟が「朝鮮人民共和国」の建国宣言をした。

 ところが8日にソウルに進駐したアメリカはこれを認めず、統治権がマッカーサーの率いる占領軍にあることを布告した。

 「これに対して、日本はアメリカ軍の干渉を退ける道義的な義務があった。人民共和国政権を保護し、南北統一した民族政権の樹立に協力することが呂運亭との約束を果たす道であったはずである」
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 以上を見てどう思いますか?。最後の「」内は原文のままです。「日本をどこまでも悪者にしたて、謝罪を迫る”自虐史観”だ!」でしょうか。違います。これは”歴史修正主義”の方です。当時のことを知る人の数はすくなくなりましたが、「敗戦」という現実を自虐的に考えないために、こんな偏った見方になってしまったのだと思います。

 終戦直後、朝鮮現地のことは知りませんが、在日朝鮮人の中には「俺たちは戦勝国民だ」といって威張りだすひとが大勢いました。敗戦国民である日本人は、ひたすらこれにさからわないようにし、無理難題もやりすごすようなところがありました。まして占領軍の指令なら絶対服従です。

 朝鮮総督府は、混乱回避のため考え得る最善の措置をとったわけだし、協力してもらった現地朝鮮人に感謝しなければならないということはあっても、「アメリカ軍の干渉を退ける道義的な義務」や「人民共和国政権を保護」するなどという大それた権限も能力もないことを無視しています。これがまちがいのもとです。

 再軍備論者や戦前復帰論者が目の敵にする「自虐史観」も、かつて国内が戦場と化し敗戦の憂き目にもあっているヨーロッパ各国では、それを捨象・成熟させ発展させる方向で議論が進められているように感じます。

 誤解をおそれずにいえば、一度も本土が戦場になったことがなく、原爆は止む得なかった、ベトナムも正義の戦争だったとするアメリカには、「自虐」史観が成り立つ余地がありません。このため、世界の大部分から支持のないイラク戦争を始め、多くの犠牲を重ねる愚を繰り返えしているのではないでしょうか。「自虐」も捨てたものではありません。

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