2012年1月30日 (月)

送電線を地図から消した電力

 以下、毎日新聞(12/01/30)の記事

 地形図の電子情報化に伴い、国土地理院が電力会社10社に送電線や鉄塔の位置について情報提供を求めたところ、全社がテロなど安全上の問題を理由に提供を拒否し、送電線などの表記が最新の電子地形図から消えたことが分かった。送電線の記載は、登山などで現在地を確認する際に利用されており、日本地理学会などは掲載の継続を求めている。【中西拓司】

 送電線や鉄塔の記載が消えたのは、国土地理院の電子国土基本図。従来の紙の地形図(縮尺2万5000分の1)に代わるものとして、昨年2月からインターネット上で公開している。 従来の地形図は現地での測量に基づいて作製していたが、電子国土基本図は航空写真に、自治体や法人などから寄せられた道路や建造物の位置情報を反映させて作っている。

 送電線や鉄塔などは航空写真では確認しにくいため、国土地理院は昨年末までに電力各社に位置情報の提供を求めた。ところが、いずれも「保安対策上の問題」を理由に提供を拒否されたという。関西電力の担当者は毎日新聞の取材に対し、「位置情報がテロなどに悪用される恐れもあり、詳細な情報は提供していない」と話す。(以下略)

 電力10社が揃ってそういうことを言うのは、元が電事連(電気事業連合会)だということだろう。そのまた元は経産省エネルギー庁だ。国土地理院も国交省管下のお役所だからそのまた元が内閣ということはなさそうだが。

 かつて5万分の1地図を持って各地を歩いたことがある。山で迷った場合、自分の位置を確認に貴重な目印になるのが送電線だ。それで山小屋にたどり着けるなど、場合によれば人命にもかかわる情報でもある。

 平地には目印になるものがたくさんあるが、送電線の所在は、不動産・建設・行政など仕事上なくてはならないものだろう。また、古い地図も歴史の検証によく使う。地図の作製は伊能忠敬以来国家事業であり、国民が手放すことのできない共有財産である。

 うさんくさいのは、「テロなどに悪用」である。9.11以来アメリカにはやった「そういえばなんでも通る。基本的人権が犠牲になってもやむを得ない」という風潮である。テロとは、裏をかいて行うもので、その元を絶つ対策がなければなにをやっても防げるものではない。

 テレビを見ていると役所などに、首からカードをぶら下げた人よくが映る。塾頭の近くの田舎の公民館までそうだ。それでなにか得々としているようにさえ見える。塾頭が所用で都心の大型ビルに入ろうとした時、「これをお願いします。テロ対策のためでご協力ください」と例のカードを渡された。

 なにか昔の「のらくろ一等兵」がぶら下げた階級章のようで嫌だったが断って入れないのも困るので従った。そのビルの地下駐車場へ公用車で乗り付けるような偉い人は、そんなものをぶらさげていない。

 そういえば、北朝鮮の偉い軍人は軍服の生地が見えないほどたくさんの勲章をぶら下げている。日本の政治家も衿に余計なものをつけている人はいるが、ファッションだと思っているのかも知れない。いずれにしてもその国の文明・民度の低さを表わしているように思えてならない。

 さて、本題に戻るが、電力の情報隠ぺい体質などというより、もっと根深いものがありそうだ。テロリストの利用とひろく国民の利便を秤にかけて考えれば簡単なことだ。お願いだから「一億一心」の再来だけはご勘弁願いたい。

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2012年1月29日 (日)

海軍あって国家なし

 昭和5年のロンドン海軍軍縮条約で、フリゲート艦など補助艦の比率を米英の10に対して日本は6と提示された。これに海軍軍令司令部の加藤寛治は7を主張してゆずらず、加藤らは「統帥権干犯」という天皇の権威を持ち出して浜口内閣を攻撃した。

 当時海軍はアメリカを仮想敵国としており、対等に戦うには最低限度7が必要だとした。これに対し、北一輝との間に次のようなやり取りがあった(松本健一『日本のナショナリズム』ちくま新書)。

 「将軍、あなたはそう言いますけれども、あなたはアメリカとだけ戦争をするつもりになっている。しかし、わたしが言ったように、日米戦争を起こせば必ずイギリスがうしろにくっつくんだ。そうしたときには十対十対七なんだから、七とったところで二十対七なんだ。こんなので戦争に勝てると思っているのか」と言ったら、将軍は「いや、海軍は国に殉じ死んでいくのみだ」と答えた。

 北はこれに対して、「そんなバカなことを言わないでください。わが国は海軍に殉じて死んでいくわけにはいかないんだから」と批判している。

 海軍あって陸軍なし、海軍あって国家なし……。省益や自らの地位しか考えない官僚精神は、今なおうけつがれて健全だ。同書は続けてこういう。

 昭和三年頃の民政党と政友会は、お互いに政権をとったり維持したりすることだけが目的になっていた。このための賄賂合戦、曝露合戦、スキャンダル合戦がものすごく、政権交代時に前政権の機密費はどこに使われていたのか、などいまと同じような話が出てきていた。

 政権をとることだけが自己目的化する二大政党政治の最大の矛盾点であり、欠陥であるが、どちらが権力をとるかによってお金の流れ方、人の集まり方が大きく違うので、過激なスキャンダル合戦となる。すると、それを見ている国民のほうには、政党は汚い、そういう汚い政治にたずさわっていない「清新」な軍人にまかせようという考え方が出てくる。

 北一輝は当時の代表的な右翼の大物である。のちに二・二六事件を指導したとの疑いを受けて刑死し、結果的に軍人をのさばらせ天皇制ファシズムを招くことになった。しかし、北は軍人よりはるかに世界に向けた広い目を持っていたことだけはたしかである。府政から市政、市政から国政とコマネズミのように動き回るハシズムより、はるかにスケールは大きい。

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2012年1月28日 (土)

お相撲さんの出身国

 大相撲初場所が終わったばかりでです。優勝は把瑠都。出身はエストニアでバルト海に面した小さな国です。隣接するラトビア、リトアニアと共に、長い間ソ連に統合されていました。たまたま、ソ連崩壊の過程における東欧各国や中国などの動静を書いた本を読んでいたので、外国人力士の出身国が頭に浮かび、調べてみました。

 そこでクイズ。外国人力士の出身国は、モンゴルの28人は別格として、ベストスリーはどこでしょう?。

 2位中国4人、3位ロシアとグルジアがそれぞれ3人です。アメリカはゼロになって久しいのですが韓国がセロになっているのは知りませんでした。出身国は10か国を数えますが、そのうち西側、いわゆる自由主義国家だったのはブラジル1か国で、あとはすべて旧共産圏の国々です。

 その中でも、チェコスロバギヤが分離独立したチェコ出身の隆の山、力士らしくない痩身での活躍がウリです。ブルガリアは長身の大関・琴欧州、下位ですがハンガリーの力士もいます。以上の各国は、ソ連衛星国といわれていましたが、スターリン死後直ちに民族運動が燃え上がったわけではありません。

 それぞれスターリンお気に入りの幹部が残っており、スターリンのあとを継ぎスターリン批判を断行したフルシチョフに抵抗して粛清されたような人もたくさんいたのです。そのソ連に従順でなく、時により鋭く対立していたのがユーゴスラビア、ルーマニア、中国などでした。

 日本ではほとんど知られていませんが、それぞれ民族の悲劇を背負い、厳しい決断、抵抗、葛藤の積み重ねの中で、現在みられるような道を切り開いてきたのです。これとは別に、つい最近までロシアと戦争状態に発展したグルジアからも、先輩・黒海に次いで栃の心、臥牙丸がきて活躍しており、さらに東へいってカザフスタン出身者もいます。

 こういった旧共産圏の国々がどういった経緯をたどって改革開放され、自由化してきたのか、どういう問題があったのか、せっかくなじみの力士が土俵をにぎわせているこの際、星取表だけではなくそういった国情についても是非紹介してもらいたいものです。

 社会主義政治体制が続いている中国・北朝鮮がこのさきどう変化するのかしないのか、参考になるようなことがたくさんあるはずです。日本のマスコミも「優勝額から日本人が消えた」などと嘆いているだけでなく、こういった国々を取り上げて、そのお国柄や歴史を紹介する、そうすれば、相撲への人気や関心ももっと高まることでしょう。

 

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2012年1月26日 (木)

ヒトラーの日本観

 ドイツでは、ヒトラーの『わが闘争』が、州法により禁書扱いになっているらしい。ネオ・ナチのバイブルにされかねないということのようだが、日本の常識からすると「そこまでしなくても」と思う。しかし第2次世界大戦の反省は、国是といっていいほどの厳しさがある。最近、英国の出版社が一部抜粋を黒塗りで発行せざるを得なかったという報道があった。
【参照】
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012012600099

Dscf3577  塾頭蔵書(写真)の訳者・平野一郎は、巻頭の序で次のように書いている

 わたしをこの仕事にふみきらせたものは、最近の一部の青少年のヒトラー礼賛の声――それはしばしば仮借なき残酷さをもつ青年期特有のヒロイズムに由来するのであろうが――であった。戦争経験なき世代こそ、この書を読むべきではないだろうか。この書をくもりなき目で読み、客観的に判断することが、この世代にとって必要であり、戦後の教育を受けたものなら、十分な批判力をもって読むことができるのではないか、と考えたからである。さらにヒトラーが痛烈に攻撃している議会の腐敗堕落、これは形を変えて現代の日本の社会にも存在しているのではなかろうか。もしそうだとするならば、議会主義という近代民主政治の最低擁護線を確保し、ファシズム勢力の台頭を予防するためにこそ、ナチ勢力の伸長過程とナチの論理をつぶさに見ることが必要なのではないか、というのが、わたしの立場である。

 本塾は、これまで何度か同書を引用した記事を書いてきた。
ヒトラーの宣伝と戦争
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-c0dc.html
ヒトラーと歴史教育
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-ac65.html
ヒトラーと逃亡兵
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-303f.html
ヒトラーとユダヤ人
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-fa24.html
ヒトラーの戦争礼賛
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-3c4f.html
ヒトラーと優生学
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-f397.html
ヒトラーと民主主義
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-e345.html

 戦時中同盟国であった日本は、ヒトラー礼賛派が多かったが、『わか闘争』の中で翻訳公開されない部分があった。今回はそれを明らかにしておこう。

 多くの人々がそう思っているように、日本は自分の文化にヨーロッパの技術を付け加えたのではなく、ヨーロッパの科学と技術が日本の特性によって装飾されたのだ。実際生活の基礎は、たとえ、日本文化が――内面的区別なのだから外観ではよけいにヨーロッパ人の目に入ってくるから――生活の色彩を限定しているにしても、もはや特に日本的な文化でないのであって、それは、ヨーロッパとアメリカの、したがってアーリア民族の強力な科学・技術的労作なのである。これらの業績に基づいてのみ、東洋も一般的な人類の進歩についてゆくことがで゜きるのだ。これらは、日々のパンのための闘争の基礎を作り出し、そのための武器と道具を生み出したのであって、ただ表面的な包装だけが、徐々に日本の存在様式に調和させられたに過ぎない。

 今日以後、仮にヨーロッパとアメリカが滅亡したとして、アーリア人の影響がそれ以上日本に及ぼされなくなったとしよう。その場合、短期間は、なお今日の日本の科学と技術の上昇は続くことができるに違いない。しかし数年で、はやくも泉は水がかれてしまい、日本的特性が強まってゆくだろう が、現在の文化は硬直し、七十年前にアーリア文化の大浪によって破られた眠りに再び落ちてゆくだろう。だから、今日の日本の発展がアーリア的源泉に生命を負っているとまったく同様、かつて遠い昔にもまた、外国の影響と精神が当時の日本文化の覚醒者であったのだ。その文化が後になって化石化したり、完全に硬直してしまったという事実は、そのことをもっともよく証明している。こうした硬直は、元来創造的な人種の本質が失われるか、あるいは、文化領域の最初の発展に動因と素材を与えた、外からの影響が後になって欠けてしまう場合にのみ、一民族に現れうる。ある民族が、文化を他人種から本質的な基礎材料として、うけとり、同化し、加工しても、それから先き、外からの影響が絶えてしまうと、またしても硬化するということが確実であるとすれば、このような人種は、おそらく「文化支持的」と呼ばれうるが、けっして「文化創造的」と呼ばれることはできない。

 塾頭曰く。――残念ながら合っているところもあるな――。

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2012年1月25日 (水)

暗中模索の年

 お先真っ暗――とは言わないが、今年ほど先の見えない年はない。

 まず、政局。予算案や消費税の案は衆議院を通るのか。解散はあるのかないのか。その前に、小沢一郎は無罪か有罪か。衆議院の定数是正はどうなるのか。

 解散があったとして、政界再編はあるのかどうか。まあ、あると見るのが常識だろう。既成政党はどこも議席を増やすだけの魅力がない。それどころか、減って当然といっていい有様だ。

 魅力がないとすれば「新党」だが、衆参合わせて100人規模の勢力を持てば、キャスティングボードが握れる。しかし、新党であれば、自・民と区別できるだけの魅力ある公約を掲げなければならない。その整合性から、そのいずれと連立を組むにしても難関が待ち構えている。

 「新党」には、広告塔となる人物が必要だ。すぐ頭に浮かぶのは橋下新党だが、ローカルからいきなり脱却できるとは思えない。小沢新党もあり得るが、無罪になったとしても、もはや自ら広告塔になることに無理があるのではないか。

 そして今年後半。野田首相が続いているという想像はどうもしにくいのだが……。だれが首相であっても、夏には福島原発事故発生原因にスポットが当たり、原発存続の可否を含む長期エネルギー政策を打ち出さなければならない。焦点は脱原発の可否だ。

 一方、沖縄普天間基地の辺野古移転を断念せざるを得ない転機が来るだろう。アメリカは大統領選がある。新国防戦略はどう進むのか。中東民主化の進展、イランやシリア、中国・北朝鮮など流動する国際情勢に対応できるだけの外交能力が築けるかどうか疑問。

 経済問題が最後になったが、ユーロー問題は今年前半になんらかの決着に至るだろう。だがその傷跡は長く続き、日本の成長にも明るさが見えてこない。最近下火になっているがTPPの議論も忘れていい存在ではない。

 以上、万事暗中模索の年。この濃い霧に国民はいいかげんうんざりしている。

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2012年1月21日 (土)

大寒とかけて

冷ややかな声ととく
その心は

「不毛な政局談義はやめ、大局に立って身を捨てて国民に奉仕をすることが民主党に一番求められている」
     野田首相、民主党大会で

「一事を必ずなさむと思わば、他の事破るもいたむべからず。人のあざけりをも恥ずべならず。万事に変えずしては、一つの大事成るべからず。
     吉田兼好『徒然草』

「どじょうがさ 金魚のまねすることねんだよなあ」
     相田みつお

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2012年1月20日 (金)

日本敗戦20日前

 高見順の『敗戦日記』を久しぶりで手に取った。たまたま開いた頁が昭和20年7月26日の分である。その日彼は、内務省・情報局から「啓発宣伝事業に関して御懇談を致したく」という手紙で呼び出され、上京している。

 集められたのは文士だけでなく、広く文化芸能団体関係者ということで、その場で配られた「紙」の全文を高見は日記にすべて書き写している。それが歴史上重要な意味を持つようになるということを、察知していたのかも知れない。

 塾頭も、読み返してみて、この公文書を今あらためて記録しておくことの意義を感じた。それは、中国が攻めて来たらとか、北朝鮮と戦争になればなどと、気軽に話す手合いが多くなったからである。戦争宣伝や攻防の現実を知ってもらうため、やや長いが文末に主要部分を転載する。それほど”戦中・戦後”は遠くなったということである。

 この会議には、机をたたき大声で叱咤する神がかりの意見を言う人、志気を昂揚させるなら、言論出版結社の自由を認めよとする「佐倉惣五郎」のような人、冷静で落ち着いた客観的意見を言う人など色々だったようだ。

 そして、高見はこう書いている。

気違いじみた大声、自分だけ愛国者で、他人はみな売国奴だといわんばかりの馬鹿な意見が天下に横行したので、日本はいまこの状態になったのだ。似而非愛国者のために真の愛国者が殴打追放され沈黙無為を強いられた。今となってもまだそのことに対する反省が行われていない。

 この時期、すでにポツダム宣言が発表され、最高戦争指導会議では天皇の指示で戦争終結の方向が打ち出されている。高見も国民も、まだそんなことは知る由もない。しかし、なんとなく負け戦となり、奇跡が起きたとしても日本が勝てる見込みのなさそうなことは、みんなが肌で感じている。

 高見はかつて治安維持法で検挙され、いわゆる「転向作家」となり釈放させた経歴を持つ。このような日記を書いて、もし特高警察に発見されたら、今度は助かる見込みがないはずだ。だが、当局の士気高揚の呼びかけは、もはや断末魔の叫び声に聞こえたのではないか。人々は小声ではあるが一時よりは自由にものを言うようになっていた。

 さらに下記の「要領」を見ると、開戦当時は、三国同盟の力強い盟友として賛美を惜しまなかったドイツが、負けたことによりその国民や軍をみそくそに罵倒し、反面反撃に成功したソ連・英国などをほめあげている。そのソ連が2週間後に突如対日宣戦布告をし、日本の敗戦を決定的にしたのは、何とも皮肉なことではないか。

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国民士気高揚に関する
 啓発宣伝実施要領
    (昭和二十年七月情報局)

 第一 宣伝方針
一、本宣伝は沖縄戦局の我に不利にして敵空襲の激化並に本土決戦必至なるの秋軍官民を挙げて断乎戦ひ抜くべき決意の下、七生尽忠、一人以て国を興すべき熾烈旺盛なる戦意を昂揚するに在り

二、本宣伝においては左の諸点を強調徹底す
 イ 今や本土決戦必至にして皇国の存亡を決するの秋なり、来るべき本土決戦こそは皇国の存亡を決する決定戦なり、本土決戦に敗れんか皇国他日の計を図るべき途絶対になし
 我国民は一人を残さず惰性による無関心、安易感を断乎排除し全生活、全精力を挙げて本決戦に勝つの一点に集中し、如何なる危急困苦にも敢然耐へ抜くべき決意を固むべし
 ロ 本土決戦をして大殲滅戦たらしむべし
   この決戦により我は敵の大兵力を一挙に殲滅し去り最後の勝利獲得の好機たらしめんために一億結束して必至敢闘すべきなり

 ハ 本土決戦に際し皇国民たるの自覚と衿持を遺憾なく振起すべし
   本土は神霊鎮まります父祖伝承の地なり断じて敵の蹂躙を許さず、敵来たらば来よ、その時こそ徹底的に撃破すべしの気概を振起し、個々の生死を超越し身を皇国に捧げて悠久の大義に殉じ帝国の光栄と歴史を守り抜くべきこと

 ニ 国民戦争の本義に徹すべし
  本土決戦とならば一億国民一人残らず戦列に加わる、国民義勇隊結成の所以もまたここにあり、隊伍盛盛一糸乱れず生産に防衛に死力を尽くすべし

  第二 宣伝の内容
一、敵の本土侵寇時期は切迫せり
 沖縄地上作戦の終結の次に来るものこそは必然的の空襲激化に続いての上陸作戦による本土侵寇なりしかもその時期たるや数旬乃至数ヶ月の近きにありと観ずべし

二、本土戦場化必至なり
 洋上及水際に敵を撃破すれ共、まぬがれての敵兵力の上陸も亦必至と考ふべし、従つて本土の一部は敵兵の蹂躙せられ全国土は敵の猛砲爆撃に曝され本土は挙げて戦場となるべし

 三、本土作戦の有利なる点次の如し
  イ 本土作戦は大軍集中及び補給の点に有利なり
   我方は所要の地点に敵に数倍する兵力を迅速に集中且つ之に対する補給も敵に比し遥に容易なり

  ロ 我は日本的特攻兵器の活躍に期待する所大なり、敵の空襲による航空機の減産は已むを得ずとするも戦場近接に伴ひ実動機数の増加は急激に上昇すめのみならず特攻基地は無数に整備せられありて同時常続的攻撃の可能なるを知るべし

  ハ 敵米英の北仏上陸の場合はその大根拠として目鼻の間に英本土あり、我本土上陸に際してはかかる近接根拠地を有せず洋上長途の補給に敵の弱点あり

  ニ 我本土には数百万の陸海精鋭部隊あり、その背後には更に数千万の義勇戦闘隊顕在するあり

四、戦争放棄は国体の破壊日本民族の滅亡なり
  イ 我国体と離れて我国民は存在せず、日本人に降伏なし
  ロ 敵の野望は我国体を破壊し我国民一人残さず殺戮若くは奴隷化し皇国を地上より抹殺するに在り

  ハ 戦争放棄は国民一部にのみ死と奴隷化をもたらすに非ず、如何なる階層、如何なる立場を問わず一人を残さずかかる非惨(註=原文のママ)なる運命に導くべし
  ニ 降伏後のドイツの現状よりも遥かに苛酷なる条件下に置かるべし

五 敗戦的思想の徹底的払拭に努べし
  イ 徒に敵の物量におびえるは誤りなり
  ロ 目前の空襲被害其他の状況により我戦力を過小評価するは誤なり
  ハ 敵陣にも苦悩の色濃厚なり
  ニ 重要生産施設の疎開復旧も着々進捗しあり

六、戦争は意志と意志との闘争なり
  イ 戦争は全精力を集中し右顧左眄するなく、遮二無二突き捲り押し捲り、最後の一瞬まで頑張りぬく方が勝つ、本土決戦は我らに課せられたる未曾有の大試練なり、これに耐へて耐へ抜く場合我々は勝つ、戦局急迫の余り「どうともなれ」の気持が微かにでも動くとき我等は敗る、強靭不屈、精神的にも肉体的にも徹底的に頑張り通し貫き通すべし

  ロ 欧州戦線における「スターリングラード」「ダンケルク」を見よ、前者に在りてはソ連が実に千数百万を戦没せしめつつもその強固なる意志と団結により最後の土壇場において、破竹の勢いにて無人の野を行くが如き独逸の大軍を一挙に押し返し、究極の利を占めたる好適例、後者は敵英の大軍が仏国戦場にて一敗地に塗れ、独空軍の縦横無尽なる猛爆に曝されつつその本土正に危殆に瀕せるにかかはらず英国民は老幼男女を問はず見事なる秩序を保ち、屈せず撓まず遂に独逸を屈服せしめたる実例を冷静に考察すべし

七、我国と「ドイツ」は根本的に異なる
  イ 我国体は万邦無比なり
  ロ 「ドイツ」き軍隊三百万の捕虜を出だせる事実に比し、我が皇軍将兵悉く特攻隊なり
  ハ 「ドイツ」の指導者はその信念と態度に欠くるところあり
  ニ サイパン、硫黄島、沖縄何れにいても我官民は常に一体協力し来たり、「ドイツ」にその例を見るを得ず

八、敵の思想謀略の激化を厳戒すべし
  イ 敵は同時に我国民の戦意の低下、軍官民離間等を狙ひ、伝単、放送等あらゆる手段による思想謀略を激化せしむるは当然予想せらるるも、我は皇国民たるの自覚に徹しその企画を破墔すべし
  ロ 和平希望の思想及戦争傍観的態度は敵謀略の乗ずべき間隙なり

九、我々は一に戦ふのみ
 畏くも第八十七臨時議会に賜りたる勅語において
 「爾有衆ノ忠誠武勇ニ信■(にんべんに奇)シ共ニ難苦ヲ分チ以テ祖宗ノ遺業ヲ恢弘セムコトヲ庶幾フ」と仰せられたる御聖旨を畏み、我国民は如何なる難苦にも堪へ、臥薪嘗胆、一人の戦争傍観者あるなく軍官民真に一致結束一切の不平不満を排除し、以て各職任において決死体当りを敢行すべし

 第三 宣伝の対象(省略)

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塾頭補注) ほかに「航空機等特定兵器緊急増産に関する啓発宣伝実施要領」があり、家庭工業で木製飛行機を作ったり、松根油増産を指示しているが、「飛べぬ飛行機」生産に「叱る指導」をしてはいけないなどと書いてある。 

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2012年1月19日 (木)

原発マフィアの黒幕

 福島の原発事故は「第2の敗戦」だということは、本塾で何度か言ってきた。しかし「敗戦」を経験したことのない人には、単なる物のたとえとしか感じないだろう。また、原発を推進し、今なおその延命を考えている政治家、企業の要人は、「嵐が過ぎ去るのを待てば」という、あたかも、敗戦時帝国陸海軍の復活を夢見た軍人そのものである。

 「第2の敗戦」、いやそれ以上の苦難にあえいでいるのが福島県の人々だ。それを他人ごとのように平然として見殺しにし、事故への責任は想定外の天災のせいにして恬と恥じない原子力村、いや、これからは「原発マフィア」と呼ぼう。あなたがたは、どういう犯罪に加担してきたか知っているのか。

 憲法に保証された基本的人権を奪った。それは、居住・移転・職業選択の自由から、財産権の侵害にまで及ぶ。それはさらに、福島に在住する故をもって風評被害という「差別」を生んでいる。その精神的・肉体的被害は、まさに戦争による被害に劣るものではない。

 国家・国民には、膨大な経済的損害を与え、これからまだまだ積み上がっていく。放射能被害は、直接間接に国内ばかりか国外まで影響を及ぼしている。国際的に長年培ってきた日本の技術の高さ、正確さ、堅実性などの評判に傷をつけ、歴史や文化に対する尊厳まで疑念の目で見られようとしている。

 さらに、政治家・官僚・専門家の信頼を低下させ、国論の分裂や政治の混迷を招き、国民はやり場のない閉塞感のなか、将来に託す夢まで奪おうとしている。このような、元凶を「原子力村」などというのんびりした平和なイメージで呼ぶのはふさわしくない。

 激しく糾弾しなければならないのは、「内閣官房原子力安全規則組織等改革準備室」なる名前だけ長ったらしい中途半端な組織が、原発の寿命を40年とするが、20年、つまり60年に延長することもできるという法律を政府に作らせようとしていることである。
 
 その黒幕は、だれか見当がつかない。経産省も今後安全・保安を担当するようになる環境省も中堅官僚の意識は微妙に変わりつつあるように見える。にもかかわらず、福島事故の原因究明の結論を今年夏まで先送りし、そこで将来の原子力・エネルギー政策のあり方を考えようというのんびりした方針なのに、なぜ、原発の寿命を盛り込んだ法案を今提出し、4月1日から施行するようにしなければならないのか。

 60年はおろか、半分の30年で再生可能エネルギーや低公害エネルギーが原発にとって代わるという、多くの試算がある。放射能をコントロールできない人類は、そうすべきであり、しなければならないということが常識化しつつある。

 それに対し、準備室は、アメリカの基準がそうなっており、世界でも認められているから、と答えたそうだ。そ~ら出ました、アメリカン・スタンダード!。アメリカも国土が狭く、地震の巣だらけで、津波を受けやすい海岸に原発がひしめいているといいたげだ。

 TPP、普天間、イランと同じ構図だ。もしかして原発マフィアには、全責任をアメリカに押し付け、日本国民を反米化させようという陰謀があるのかも知れない。

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2012年1月17日 (火)

米・イランの秘密ルート

 先週10日に「イラン制裁と日本」という記事を書いた。米・イラン間の緊張拡大を憂い、日本は制裁同調を要求するアメリカの意に沿うことではなく、緊張緩和に向けた外交努力を払うべきだと主張した。そこへ、[ていわさま]から次のようなコメントを頂いた

この問題はどのように説明しようか悩むところですが、明らかなのは両国には太いパイプがあります。オバマ民主党よりは共和党のラインと言ってよいでしょう。歴史を振り返れば、その答えは解ると思います。
ではオバマは何故制裁強化に踏み切ったのでしょうか?答えは明確です。オバマ民主党のラインを築きたいのです。 

 ありがたいことで、早速それに関する報道が目に飛び込んできた。ひとつはニューヨーク・タイムズを引用した15日付毎日新聞で《米政府は「秘密ルート」を通じ、イランの最高指導者ハメネイ師に海峡封鎖をしないよう警告した》としている。

 それに対し、共同通信はニューヨーク・タイムズ記事をフォローして《米政権からのメッセージの詳細やイランの最高指導者ハメネイ師宛てであったかどうかなどは不明。報道官は、米国の国連大使、米国の利益代表部を務めるテヘランのスイス大使館イラクのタラバニ大統領の3者からイラン側に伝達されたと説明している》と、よりくわしい。

 [ていわさま]のいう「太いパイプ」とは、これと別のもののようだが、共同通信の伝えるルートなら、国交のない国同士なら当然利用し合うルートで「秘密ルート」という程のものではない。いずれにしても、お互いの腹の中は見通しており、緊張は、国内権力(選挙)闘争や国内世論、同盟国・支持国向けのプロパガンダの要素が強い、ということだけはわかるような気がする。

 そういった中で、日本外交が原子炉と新幹線を売り込むだけというのはさびしすぎる。玄葉大臣にどこまで大人の外交ができるのか、さっぱり見えてこない。ただし日本の政治家が、米、イランのような手練手管を駆使することは絶対反対だ。昔、関東軍がこれで取り返しのつかない失敗をした。

 イランの核技術者が続々と暗殺されるなど、ソ連崩壊前後のように異様な闇の部分が多すぎる。日本は、政治家だけでなく国民全体を見てもそういったことに対する訓練ができておらず、韓国・台湾以下だということだけは確かなようだ。外交による怪我の代償は、とてつもなく大きいことを忘れてはならない。

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2012年1月16日 (月)

続・野田改造内閣採点

 前回このテーマで20点以下になりそう……、と書いたばかりである。そこに田中直紀防衛相のことも書こうと思ったが、どうしても、「田中真紀子の婿で云々」という話になりそうなのでやめた。塾頭は、政治家が2代目、3代目であろうと、政治家として独自の見識を持ち、立派な業績を上げられるなら出自を問わない主義である。

 直紀氏については、福島で衆議院に自民党から出馬して以来、その夫唱婦随(逆か!)ぶりが報じられる程度で、目立つ業績は何一つ知らない。しかし、「防衛相?、大丈夫かなあ」という印象はすくなからず持っていた。

 それが、早くもマスコミから足元をすくわれた。普天間の辺野古移転を「年内着工」と初めて時期を明言した。これが、本人の信念なら立派なものだがすでに「あれは手順を話したjまで」などと弁解しているらしい。それにしても、野田首相の「反対運動で血を見るようなことことまでしてやらないしアメリカもそれを望んでいない」というのと明らかに背反する。

 発言は、信念からでたものではなく、お役人がしつらえた勉強会から得た知識に違いない。それを証明するように、同じ場で出たPKO派遣の自衛隊の武器使用制限について、武器輸出3原則緩和の話と取違え、何度聞き直しても「防弾チョッキなど現地の要望があれば置いてこれるようにする」と繰り返したそうだ。昔のことなので役人のレクチャーになかったのだろう。

 塾頭は素人で高齢者だが、そんなことを取り違えたりしない。自分の頭でちゃんと答えられる。「防衛は素人」発言の一川前大臣よりひどい。自民側では早速国会で問題視するようだが、彼も小沢Gである。野田総理はどうする?。これで、採点は10点台前半が確実になった。

 
 

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